2024年度 政策実践プロジェクト活動報告
2024年度 政策科学科「政策実践プロジェクト」
北九州市立大学法学部は、少人数教育が特徴です。教員と学生が密接にかかわり合い、相互に学びあうなかで、社会の変化に対応できる人材育成を目指しています。また、政策科学科では、公共政策分野の課題解決に向けた政策分析、政策立案能力を養うため、フィールドを重視した実践的な政策研究活動を行う「政策実践プロジェクト」を展開しています。
多くの教員が独自のプログラムを実施しています。ここでは2024年度に実施した4つのゼミの政策実践プロジェクトの取り組みをご紹介します。
都市の魅力創出と価値創造-田代ゼミ
田代ゼミでは、都市の魅力創出に向けた政策、公共政策分野における価値の創造に関する研究を行っています。具体的には、歴史、文化、景観など地域固有の文化的資源を活用した地域の魅力創出、図書館や都市公園などの公共空間?公共施設のリ?デザインといった創造的な地域づくりです。
2024年度は、大阪?関西万博を契機に都市再生整備を進める大阪市を選定しました。
代表的なプロジェクトが「うめきた(大阪駅北地区)プロジェクト」と「御堂筋道路空間再編事業(ウォーカブルまちづくり)」です。事業推進の中核企業のひとつである竹中工務店、御堂筋将来ビジョンと道路空間再編事業、御堂筋デザインのコントロールを進める大阪市計画調整局?建設局、御堂筋まちづくりネットワークから事業概要の説明と質疑応答のあと、現地視察を行いました。
最終日は、インバウンドでにぎわう新世界界隈を回り、大阪名物の串カツもいただくなど充実した視察ツアーとなりました。
フィリピンから学ぶ貧困対策-吉田ゼミ
吉田ゼミでは、特に都市、労働、貧困、福祉に関わる政策を、国や自治体がどのように運用し、それらが該当地域や住民たちにどのような影響を与えているのか、国内外の研修を通じて考察します。
2024年度のフィリピン研修では、役場やNGO、公立高校、私立病院、福祉施設、ムスリム?コミュニティを訪問し、フィリピンでの貧困対策および福祉政策の理念と実践について学びました。また、都市政策の視点から、市場や公園内の露天商に、現状と課題についてヒアリングを行いました。研修で得た学びは、社会福祉開発省のソーシャルワーカーと共有し、日本との違いだけでなく、日本がフィリピンの事例から学べそうな点など、フィードバックを行いました。
このように、吉田ゼミでは国内外の研修を通じて、「演習」や「政策調査論」で事前に学んだ知識を実践に生かすことで、政策や地域課題を検討する能力を身に付けることができます。
島から学ぶ移住定住?観光政策-黒石ゼミ
黒石ゼミでは、行政学?地方自治論の視点から、地域の現在と未来について学びを深めています。
2024年度は、香川県高松市と土庄町(小豆島)を訪問し、海を越える広域連携?移住定住?観光に関するヒアリング調査を行い、学びを深めました。高松市と土庄町は、他の市町とともに「瀬戸?高松広域連携中枢都市圏」を構成しており、「海を越える広域連携」に取り組んでいます。
今回の調査では、高松市役所、土庄町役場、小豆島で移住定住に関する活動を行うNPO法人トティエへのヒアリング調査を行いました。具体的には、移住定住や観光分野における取組みに注目し、「都市(高松市)」と「島にある町(土庄町)」が連携するにあたって、どのような意義や課題があるのかを学びました。
活動全体を通して、学生が主体となって研究課題を設定し、調査先を決め、報告書を取りまとめました。ここでの成果を踏まえ、活動報告会を行い、学年を超えた活発な議論が展開されました。
動物行政?動物政策の実証分析-横山ゼミ
横山ゼミでは、政策の実施によって社会や私たちの暮らしにもたらされる成果や影響には一体どのようなものがあるのか、地方自治体や中央省庁のあり方、行政に関わる様々な組織?個人の実際の活動に着目した実証的な研究を行っています。
2024年度は、学生主体で設定した「空港で働く犬」をテーマに、補助犬や動植物検疫探知犬、麻薬探知犬について調べ、文献?資料の読み込みやオンラインでのインタビュー等を行い、8月には関西国際空港にある「大阪税関麻薬探知犬管理センター」に赴き、現地調査を実施しました。
麻薬の持ち込みや探知犬の実際、訓練について等のレクチャーを受けたあと、センター内を見学し、空港の荷物受け取り場所を模した施設で、探知犬とハンドラーによる実際の訓練にも参加するという大変貴重な経験をさせていただきました。
質疑では、麻薬探知犬の必要性や実務上?訓練上の課題など率直な質問が相次ぎましたが、いずれも丁寧にユーモアも交えておこたえくださり、犬の特性を活かした役割や空港という水際での対策についての理解を深めることができました。